熱や鼻水の症状がある風邪などの病気とは異なり、心の病気は気付きにくいことがあります。心の病気は、「病気」であることに気付かないとご自身がつらいだけでなく、命にかかわるような事態に発展することもあります。
我々は、少しでもそのような患者様を救う手助けが出来ればと考えています。当院でなくても、神経科、精神科を受診することにより道が開かれることもありますので、是非とも早期受診をなさってください。少しでも多くの患者様が救われることが、我々の願いでもあります。
図1 うつ病・躁うつ病の患者総数
(資料:厚生労働省「患者調査」)
平成14年頃を境にうつ病の診断を受ける患者様が急増しています。 うつ病は早期治療が極めて重要で、逆に不充分な治療だったり、治療を始める時期が遅かったりすると症状は長引きます。最悪な結末は、自殺です。うつ病と自殺の関係についてご説明していきます。
(資料:警察庁「自殺統計」より厚生労働省自殺対策推進室作成)
最近の例を挙げてみますと、平成27年の自殺者は24,025人います(図3を参照)。その中で健康問題によって自殺した方は12,145人、内うつ病が原因だとされている方が5,080人います。うつ病が原因で自殺している方が多いことが分かります。
※自殺の原因はうつ病ではなく、宗教的制約がないことなどの意見もあります。
図3 自殺者数の推移
(資料:警察庁生活安全局生活安全企画課「平成27年中における自殺の状況」平成28年3月18日)
平成22年から自殺者は減少傾向です。
うつ病患者が増加していることに対して自殺者が減少傾向にある理由として、そもそも自殺の原因がうつ病ではなく宗教的制約がないことや、経営者がすべての責任を負うなどの誤った美学ではないかと考えられますが、うつ病の早期受診をする患者様が増えてきたからとの意見もありますので、早期発見・早期治療が大切だといえます。
図4 うつ病患者の初診診療科
(資料:三木 治「心身医学 42(9) : 585, 2002[L20060620004]」より改変)
精神科を受診される方が5.6%に対し、内科を受診される方が64.7%もいます。患者様の多くは、初診時に身体症状を訴えて内科を受診されているようです。しかし、心の病等の場合、内科で発見するのは難しい場合もあります。心の病が原因で睡眠や食欲など何かしら悪影響を及ぼしているかもしれません。
発見が遅れてしまうこともありますので、何か異変を感じたらお早めにメンタルクリニックも受診してみてください。
図5 世界における日本の自殺死亡率
(資料:内閣府自殺対策推進室「政府における自殺対策の取組について」)
図3でご説明したとおり、日本の自殺者数は平成22年から減少傾向ではありますが、日本は他国に比べると依然高い数値を保持しています。
メンタルクリニックの医師として、自殺という結末にならないよう、充分な対応を行うことが責務だと考えています。
そこで、当院では「就労支援デイ・ナイトケア」「復職支援リワークプログラム」などを実施し、社会参加の場をご用意する工夫を積極的に行っています。皆様の良き理解者として、安心して生活できるようにメンタルクリニックをご活用ください。些細なことでもお気軽にご相談いただければと思います。皆様のご来院を心よりお待ちしております。