ここで言う「恐怖症」とは、通常であればたいして恐れる必要のない、ある特定の対象や状況、場面に対して、激しい恐れが生じ、避けてしまうことを言います。
よくあるのは、動物(ヘビなど)、鳥、昆虫、高所、雷、飛行、閉所、血液、注射、病院や歯科、トンネル、橋などです。例えば「高所恐怖症」について、高い場所にいると恐怖を感じることを言いますが、この言葉はよく耳にするのではないかと思います。周囲の方で、高所恐怖症の方も数名いるのではないでしょうか。高いところが怖いことにより、「飛行機に乗れない」「観覧車に乗れない」など不便に感じている方も多いでしょう。しかし、よく耳にする高所恐怖症でも、そのために治療を受けるとはあまり考えられていません。
以前は、何らかの恐怖体験がきっかけで恐怖症が発症すると言われていましたが、患者様の中には、そういったきっかけのない人もいます。10人に1人の人がかかる精神病と言われていますが、多くの人の場合、恐怖の対象を避ければ、日常生活は過ごせるため、治療になるケースは少ないです。しかし、最近では、学校の教室が特定の恐怖対象というケースもあります。この場合は、日常生活に大きな影響が出てきてしまいます。不登校と誤解され解決するまで時間がかかることもありますので、早めに診察にいらしてください。
特定の恐怖症は病気です。「わがまま」でも「逃げ」でもありませんので、どうか患者様を責めないでください。治療によって、症状に対する苦痛は改善できます。
家系的に発症しやい場合が多いので、その原因に体質的なものが含まれていると考えられています。以前までは、このような体質の人に恐怖体験(=トラウマ)が刻まれると、それをきっかけに発症してしまうと考えられていました。しかし、患者様の中にはこの「きっかけ」が見当たらない人や、はじめにパニック発作が出て、その後に恐怖症状が出る人もいることから、現在ではトラウマ的な状況を経験することで必ずしも恐怖行動を起こすとは言われていません。