期間は、2~3か月しか持続しないこともあれば、数年間持続することもあります。小さな声では話す、首を振って意思表示をする、特定の人とは話す、誰とも話さないなど、お子さんによって症状の程度もさまざまです。中には、給食を食べることも、トイレを使用することもできないお子さんもいます。また、自身の言語能力に対し、長く劣等感をもつ場合もあります。
選択性緘黙(せんたくせいかんもく)というのは、言語能力は正常であるのに、選択された特定の場面(学校など)や人に対して、話すことができないという小児期特有の状態です。場面緘黙症とも言います。
家庭では良く話すことが多いので、親御さんが気付かない場合や、気付いても成長とともに変わるだろうと考えることが多いです。また、学校でも特に他の児童に迷惑をかけるわけではないので、教師も深刻に捉えないため、治療が必要と考えられず、今まではあまり受診されてきませんでした。しかし、合併する症状でご本人やご家族が苦しむことや、わが国では長期化する例が多いと報告されていることを考えますと、早めに一度は受診されることをお勧めします。なお、生活場面全体にわたって話せない場合は、全緘黙と言いますが、選択性緘黙(せんたくせいかんもく)に比べると稀です。
選択性緘黙(せんたくせいかんもく)の原因は、子ども自身の要因と家庭環境の要因があります。子ども自身の要因としては、知能や言語の未発達、脳波の異常などが考えられます。家庭環境の要因としては、家族の中で極度に内気な人や選択性緘黙(せんたくせいかんもく)な人がいるような遺伝的なものが考えられます。
共通することは、家庭外での強い不安で、社会不安症を合併しています。不登校になることは稀ですが、からかわれたり、いじめられたりすることが全くないわけではありません。家庭では、強迫症、拒絶、かんしゃく、反抗的または攻撃的行動がしばしば認められます。時には、遺尿症や遺糞症を伴うこともあります。
話せるようにするということが治療目的ではありますが、そこだけに注目するのではなく、話そうとしても話せないという緊張や不安、恐怖心を取り除くようにすることが重要です。まずは、沈黙の意味を吟味し、遊戯療法という言語的アプローチを取らない治療を中心に行っていきます。
治療には数年を要することが多いので、親御さんの治療への参加も欠かせません。同時に、担任の保育士や教師と連携し、強引に言語表現を促すことは、逆効果であることを理解してもらうことも重要です。
緘黙の状態は、成長とともに改善する例も多くあります。話すことを強要したり、話さないことを理由に叱ったり、周囲の目にさらすといったことは、症状を悪化させることにつながります。むしろ、根底にあるお子さんの不安を理解してあげることが大切です。
選択性緘黙について、お悩みの方まずはご相談ください。当院には遊戯療法や箱庭療法などの治療法もあり、言葉で感情を表すのが苦手なお子様にも対応しています。